松井選手よ「遅刻」は「チームの勝利」の為ですか?
2011年9月6日
宇佐美 保
先の7月20日(現地時間、以下同)米大リーグ・アスレチックスの松井秀喜がついに日米通算500ホームランを達成しました。
(この記念のホームランは6月16日以来、103打席ぶりのホームランでした)
そして、8月15日には、史上最年長の40歳353日で、ツインズで指名打者を務めるジム・トーミー選手が、今季10、11号とホームランを2打席連発し、メジャー史上8人目の通算600ホームランを達成しました。
しかし、松井秀喜選手は、現在37歳2カ月(1974年6月12日生まれ)ですから、トーミー選手の記録達成時の年齢迄には、未だ、4年ほどの猶予があります。
その間、毎年、30本近くのホームランをかっ飛ばすなら、松井選手も600ホームランに到達可能です。
でもどうでしょうか?
次の記事(サンケイスポーツ:8月21日)を見ると、そんなことを期待するのは無理と思えてなりません。
米大リーグ、アスレチックスの松井秀喜外野手(37)は、ブルージェイズ戦に「3番・DH」で出場して4打数1安打。………… ただ『遅刻をすると本塁打が出る』というゴジラ伝説は不発に終わった。この日は集合時間を勘違いして5分遅刻。球場へ向かう高速道路が事故で混んでいたこともあり、クラブハウスに現れたときには、すでにウオーミングアップが始まっていた。これまでは遅刻を本塁打で帳消しにしてしまうことが多かった松井だが、この日は1安打止まり。本塁打は10試合出ていない。 |
この日の松井選手の打席をNHK-BSのMLBハイライトの番組で見ましたら、案の定、第1、2打席とも、アウトコースの球なのに(体が早く開き)ホームラン狙いで、ライトスタンドへ向けてバットを振り回し、次の記事の内容となっていました。
……この日も最初の2打席は一ゴロと3球三振に倒れた…… |
アスレチックスの前監督ボブ・ゲレン氏は、松井選手を相手先発が左投手なら当然の如くに先発から落とし、右投手の場合ですら頻繁にベンチを温めさせていました。
松井選手には冷たく当っているようにも見えました。
そのゲレン氏の退任の後、メルビン監督代行を務めるや、松井選手を主軸で重用し、松井選手を復活させました。
ですから、私は、ゲレン氏を恨み、メルビン氏に感謝したものです。
しかし、今になって思うと、ゲレン氏の采配こそが妥当だったのでは?と考えてしまいます。
ゲレン氏は、松井選手(アスレチックスでは、最年長)に対して「若手への手本として不適切」と評価されたのではないでしょうか?!
何しろ、「遅刻」を反省することなく、「打撃フォーム」の改良向上に努めるという選手ではないのですから!
(「それが僕なんです」では、「若手への手本」としては不適格です)
ところが、成績が上がらない選手を安く仕入れ、アスレチックスで好成績をマークさせて、他球団に高く売るといったマネー・ボール(マイケル・ルイス著)で有名なビリー・ビーン氏(アスレチックスのゼネラルマネージャー)にとっては、松井選手の成績を上げる事は重大事であり、ゲレン氏の方針を排除し、メルビン氏を監督代行に起用したのかもしれません。
(一寸横道)
ビリー・ビーン氏は、打率よりも安打数に、四死球数も加えて算出した「出塁率」、更には、この「出塁率」に、長打率(=塁打数/打数)を加算した「OPS」も重視しています。
年度 |
打率 |
出塁率 |
長打率 |
OPS |
(三振率) |
|
松井 |
2010 |
.274 |
.361 |
.459 |
.820 |
0.203 |
2011 |
.262 |
.327 |
.396 |
.723 |
0.168 |
|
イチロー |
2010 |
.315 |
.359 |
.394 |
.754 |
0.126 |
2011 |
.273 |
.310 |
.327 |
.637 |
0.092 |
(日本時間の2011年9月6日時点) |
このビリー・ビーン氏の尺度では、昨年期待外れと言う事でエンジェルスを追い出された松井選手は、イチロー選手を優れている(今シーズンも)事になります。
(但し、私が勝手に算出した三振率(=三振数/打数)を見ますと、イチロー選手が優れています。
しかし、彼は、四球で出塁するよりも、200本安打へ向けての安打数を稼ぐ為に、アウト覚悟でバットを振っている感じがします。
これでは、チームはガタガタになってしまいます。
ゲレン氏がイチロー選手のマリナーズの監督になったら、イチロー選手をベンチに引っ込めるか、試合に出すなら3番に据えるかもしれません。
(閑話休題)
メルビン氏は就任した9日のホワイトソックス戦から、松井選手を全7試合で先発起用。しかも、主軸で使われた松井選手のその後の活躍は目を見張るべきものがあります。
まるで、ビリー・ビーン氏の大事業が達成するかのような勢いでした。
それでも、松井選手のホームランは、このひと月ほどは影をひそめ、未だに11本で足踏み状態です。
なにしろ、松井選手は9月4日(日本時間5日)、外野フェンスを直撃する3本の二塁打を放つ活躍をしましたが、フェンスを越えることはありませんでした。
松井選手(188cm/95kg)よりも体格の劣るチームメートのカート・スズキ捕手は13本打っているというのに!
これでは、ジム・トーミー選手のように40歳近くまで(それ以上)活躍して、600号ホームランを松井選手に期待するのは残念なことですが無理?とも思ってしまいます。
更には、先の拙文≪松井秀喜選手よ脱皮して下さい≫同様に、ある方から松井選手の関してのメールを頂きましたので、そのメールを次に転載させて頂きます。
書いていて思い出したことがありますが、松井浩氏と運動科学研究所の所長高岡英夫 氏は、松井選手のバッティングについて簡単にですが分析して、どこかでコメントを寄せていました。 高岡氏らによると、松井選手は、いいときは、スィングのフォローで自然に(重心が高いこともあってある程度)反った姿勢になる。これはもともとホームランバッターではそうなるのでかまわないが、悪いときの松井選手は反って打とうとしている、自然に反るのと反らすのは違うという内容でした。 たぶんメジャー後の話です。 今それなりに活躍できていますが、重心は高いままでまだ、意識して反ってみえます。 そういう打ち方でもレギュラーで使われればこれだけ活躍できるのでしたら、宇佐美様の指摘したところをなおせば、もっと活躍できて、好不調の波も減るのでしょうに。 あと王貞治 氏の「野球にときめいて」の文章から巌の身について少し抜き出しました。 『・・・合気道も続けました。ここで学んだのは、物を動かすのは「気」だということです。「巌の身」 という言葉を教わったのもこの頃でした。川上さんがよく言っていた「不動心」と同じだと思うのですが、どんなに雨風が吹き荒れようと山のような心境でいるということでしょうか。「巌の身」になるには下腹、へその下の1点に気を集中させなければならない。気が胸にあると上体は揺れ動いてしまうからです。へその下に気があれば上体から力が抜ける。自然体になる。外界からの力にとっさに反応できるのです。そして身体と心がひとつになれば、どんな球にも順応できる。構えたままの姿勢から球が打てるのです』 へその下に気を集中というのは、いいかえれば意識(=気)を下腹部の1点におくことで重心をさげておく、ということでしょう。下腹部に意識をおくと確かに上体の力みもとれ呼吸も深くなりますし、その分メンタルも落ち着くでしょうから理にかなった教えですね。 そして松井選手ですが、王氏の言葉を借りるならば、現在も胸に気がある状態、にみえます・・・ 王氏のいうように気をへその下におろしたままで、メジャーでも40歳くらいまで続けられるような息の長い、周りからも本当の意味で尊敬を勝ち取るような選手になってほしいです。 |